柳とオレンジジュースと1/3の純情な恋心

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心拍数が否応なしに上昇しています。微かに指は震えていまして。 目の前のこのスリーピングビューティは、そんな俺の気も知らずに心地好い寝息をたてながら夢の世界へと旅立たれたままで。 「はぁ……はぁ……」 さながら危ない人……いや完全に危ない人と化した俺は荒い息をたてながらその頬に向けて、ゆっくりと、そうまるで死の匂いがする戦地の密林のたった数百mを何十時間もかけて移動する一流のアーミーのスピードのように指を伸ばしていきます。 そのモチモチとした雪のような汚れを知らない白い肌、俺は今そこに汚れをば持ち込まんとしています。 「すぅすぅ……」 無垢な上杉柳の寝顔は俺の正常な思考を蝕ばみ尽くしていました。 「神よ……罪深い我を許したもう」 「神が許しても、俺が許さんがな」 ビックゥゥゥゥゥウウウウウ!!!!!! 反射的に振り返りますと、そこには世にも恐ろしい俺の双子の姉の杏華さんが立っておられましたのです。 「ほほぅ……俺がいない間に寝てる女を家に連れ込んでナニしようとしてたんだ、コラ? 」 姉貴はケンシロウよろしく両拳と首の関節をバキバキ鳴らしながら、ゆっくりと俺に近づいてきます。 「えっ!? 女の子……? 何それ……俺には全然そんなの見えないんだけど……はっ!? まさか幽霊じゃね!? この地に住み着く地縛霊とかい」 「黙れ!! そして死ねぇ!?」 そして俺の断末魔が響き渡るのでした。
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