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「……かっ……へあっ!?」
第一声は自分でもびっくりするくらいのまぬけなもので。
そこに存在しているこんな小さな可愛らしい紅髪の少女に俺は全力で恐怖していました。
こ、殺される……。
そ、そうだ! きっと昨日の報復行為に来たに違いない……!! ききききっと姉貴から全ての話を聞いてそれで……っ!!
や、やめろぉぉぉ!!!!死にたくないぃぃぃ!!!! 死にたく……死にたくないぃぃいいい!!!!
「……どうしたの?」
「ありがとう……たくさんの……ありがとう……思い出を……これだけあればぁもう……充分だよ」
俺が死を覚悟している中、目の前にいる紅の死神は後ろで手を組み、少し困ったような顔をしています。
殺し方を……殺し方を迷っているんか!?
そして紅の死神は後ろで組んでいる手をゆっくりと前に差し出そうとするモーションに入りました。
あの構えは……く、紅十字やぁッッ!?
堪忍や……堪忍やでぇぇええ!!!!
しかしながら目の前に現れたのは、小さな手に握られた果汁100%のオレンジジュース。
きょとん顔の俺の顔をちらりと見た後、上杉柳は頬と耳をこれでもかってくらい赤く染めながら、下を向いて小さな唇を微かに震わせています。
「昨日はありがとう……その、すごく美味しかった。とっても、とっても美味しかった。祐亜のご飯、また食べたい」
そしてオレンジジュースを俺に押し付けた後、教室の入口までトタトタと走っていてしまいました。
「私は上杉柳……柳って呼んでいい」
そんなことを言って彼女は去って行きました。俺を含め、教室にいるみんな全員がポカンです。
だがしかし……。
……なんだろう、この気持ち……?
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