紅色のきもち

4/10
29065人が本棚に入れています
本棚に追加
/48ページ
どうしてこうなったし……。 彼女と二人で歩きながら俺は何度そう自問自答を繰り返したのでしょうか。しかし一向に答えなど出るわけもなく、歩き続けるしかありませんでした。 すぐ横を歩く小柄な彼女に視線を向けます。きめ細かで、とても綺麗で流れるような紅い髪をショートにしていて、超絶キュート。そして整った目鼻立ちに、少し眠そうな大きな海洋深層水のように深い瞳が超絶キュート。 こうして一緒にいれば、あの超絶ジェノサイダーの一面なんざどうして浮かんでくることがありましょうか、いや浮かんでくることはありません。 などと、彼女を観察しながら一人思っていますと、彼女がこちらに顔を向けてきました。 「ねぇ、祐亜?」 「は、はい!? どうしました!?」 いきなりだったので少し慌てた調子で返してしまいました。 「祐亜は好きな人いるの?」 ……この子は基本突拍子もないですな。 「いや、特にはいませんが」 俺がこう返すと、彼女は俺に向けていた顔を元の位置に戻しました。 「そう」 それだけ言うと、上杉柳はまた黙りこくってしまいました。 しかし、彼女の方をしばらく見つめていますと、無表情のまま鞄を持っていない左手の方で、グッ! ってやってました。こう、拳を作って、やったぜ! みたいな感じで。 なにをやったのかよくわからない俺です、彼女を見ていて答えが出るわけでもないので、俺も視線を前に戻しました。 上杉柳……全くもって謎であります。
/48ページ

最初のコメントを投稿しよう!