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帰り道は夕日を背に、上杉柳の少し後ろを歩きます。
まさか、またこの子と一緒に帰る日が来るとは思わなんだでしたよ。
買物袋を片手に、時々こちらを見てくるジェノサイダーは凄く……ちっちゃいです。
しかしこうして、一緒に帰ろうなんて誘われるなんて、ちょっとは仲良くなれたみたいです……いざとなったら助けてもらいますか。
しかしあれです、会話がありません。
俺自身、そんな口下手って訳じゃないんですが、上杉柳みたいなタイプとは会話するのが苦手です。
けど、なんとなくこんな沈黙も悪くないです。
上杉柳の長く伸びる黒い影を見つめながら、俺はそんなことを思ってました。
彼女はどんなことを思いながら今歩いているんだろう、ミステリアスな柳の心情を思ってみました。
九分九厘、食べ物のことだろう、違いありませんな。
俺が大変失礼な予想を立てていますと、夕焼けの色に染まった短い髪をなびかせながら、上杉柳がこちらに振り向きました。
俺のことを見つめる少し上目遣いの表情に、不覚にもドキっとなってしまいました。
「あの……」
彼女は視線を地面に落とします。
「ありがとう、いろいろと」
今度は噛みませんでしたか。
下を向きながらはじらいの表情を浮かべる上杉柳は、それはそれはいじらしく、んでもって可愛らしくもありまして。
「こ、こまけぇこたぁ、いいんですよ」
くそ……ちっと照れてしまいました。悔しい! ビクン……ビクン。
「その! ……何かお礼をしたいと思う」
上杉柳は俺の顔を見ながら、こんな可愛らしい提案をしてきました。
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