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翌日から佐山中尉は訓練を再開した。
しかしまだ傷が完全に癒えた訳ではなく無理は禁物らしい。
医者からは試験飛行は体調が万全になってからが良いと言われていた。
「ふぅ……」
軽い走り込みをした後、休憩ついでに佐山中尉はそことなく空を見あげる。
鳥が飛ぶのどかな風景。今もどこかでB-29が偵察や爆撃を行っているのだろうか――
ふとそんなことを考えて先日のB-29の襲撃を思い出した。
「っ……嫌なことを思い出すなぁ」
佐山中尉は自分が被弾したことより撃てども撃てども墜ちなかったあの硬さに驚いていた。
「20㎜砲でも墜ちないか……」
現在の海軍の単座戦闘機における最大の砲は20㎜である、それで墜ちなかったのはやはり痛い。
「カノン砲でも乗っけりゃ話は別だよな。」
ふと頭の上から声が降ってくる。
はてなと佐山中尉は体をおこし振り返る。
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