合い鍵

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――いま、なんつった? つき…? つき、つき。 …………………。 付き合うーーーっ??! 「つっ‥きぁぅ…って、だれとっ だれがっ?!」 「だれって…俺と、あかに‥「わーわーわーっ!!!!!」 嘘だっ! んな話し、超初耳だしっ!!! かめとっ‥赤西がっ、付き合うとかっ……!!! 「…ぃ、いいっ!いいからっ!!そういう嘘とか、つかなくてっ!!!」 なんでっ、なんでなんだよっ!? なんの冗談だよ?!! 「ちょっ、たっちゃ‥」 「嘘じゃねえし。」 混乱する頭を抱え込む俺に、赤西の冷静な声が耳に届いた。 いや、冷静を装った、って表現のほうが正しいかも知れない。 「へっ、」 「だから、嘘じゃねえっつってんの。嘘つく意味がわかんねえし。 なに上田、偏見とかあんの」 それは… 「‥ない。けど、…けどっ、」 お前らは、”そういう”んじゃないだろ? あいつらみたいな目、してないだろ。 お前らは、違うだろ―――…? 「たっちゃん、」 ふわり、とかめに肩を抱かれて。 その腕の暖かさに、どうしてか、涙がこぼれた。 泣くつもりなんかなかったのに。 「俺ね、赤西のこと好きになってよかったよ。 ひとを好きになるって、すごいことだなって思った。 だって世界が変わった気分になるんだよ。凄くない? いつも明日が待ち遠しいって思いながら一日が終わるんだ。 俺、赤西好きにならなかったら、こんなふうになれなかったから。」 ――それって奇跡みたいじゃない? そう言ったかめの目が、すごく綺麗で。 今まで自分を”そういう対象”に見てくるヤツの濁った目しか知らなかったから。 男同士とか、欲にまみれた感情ばっかで、恋愛だなんて呼べないんだって。 きっと恋愛って、異性とでしか成立しないんだって思ってた。 でも、違うんだ。 赤西を好きになってよかったって、世界が変わったって言うかめの目は。 ”好き”は自分次第でどんな色にも変わるんだって俺に教えてくれた。 .
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