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「じゃあ、たっちゃん。頑張ってね」
「…‥ん、ありがと。」
すっかり日も暮れて、俺は家までの帰り道をかめとふたりで歩いた。
赤西は途中から方向が違うから、俺らとは別々だったけど。
かめとふたりの帰り道、俺は赤西と付き合うようになったいきさつを聞いた。
かめは高校の受験勉強してるときに好きだって気付いた、とか。
赤西はカノジョが途切れることはなくて、そのときはすごく毎日辛かった、とか。
カノジョと別れて自分のところに来てくれたときは、不謹慎だけど嬉しかったんだ、って。
かめは、ことばの一つ一つを噛み締めるみたいに、大切そうに赤西とのことを話した。
俺は、胸の奥底の、それよりもっと深いところにしまい込んでしまった自分の気持ちを、こんな風に中丸に話せたらなって思った。
ひとを好きになるのに、きっと条件なんかいらないんだ。
かめに見送られて、家に入ってから玄関先で携帯を取り出すと、俺は2階の自分の部屋に足早にあがった。
トン トン トン トン、
階段を上る自分の足音が、速まっていく鼓動と同じスピードみたいで、なんだかやけに緊張する。
部屋に入れば、俺は電気もつけないまま鞄もそのへんに置き去りにして、携帯のメール作成画面を開いた。
送信相手は、中丸。
中丸相手に、メールするだけでこんなに緊張するとかありえないから。
……俺のことフッたりしたら、プールに突き落としてやる。
【中丸、あした話しがあるから。じゃ。】
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