雫星。

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例えば、そうだな。 「僕はこういう人間です」とだれかに説明するとして。 自分を表現するのに、どんな言葉が必要なんだろうと考えてみた。 どんな言葉だったら相手に伝わるんだろう。 知ってる限りの言葉のそれらは、いつかも忘れた遠い過去からきょう現在まで。 「自分」を表現されるために使われてきた筈の言葉だった。 ――本当の、俺なのか だれかが用意していた自分自身へのイメージ。それは空想でしかないんだ。きっと。 そして気付く、自分と世界の温度差。 世界なんて言い方したら、ちょっと大袈裟すぎるかな。 それくらい大袈裟に孤独なんて大それたものを感じてしまった瞬間に。 ああ あいつなら、と咄嗟にお前に置き換えてしまうのはもう癖なのかも知れない。 「自分探しなんてする奴の気がしれないって思うわけ。 自分のことなら昔から自分が1番よく知ってるし。」 お前らしいそんな言葉に、素っ気ない返事をしたのはもうずいぶん前の出来事なような気がする。 なあ、それなら俺はどんな人間なんだよ。 だれのどんな言葉もなんか違う。 納得いかない。 だから、 お前の言葉で聞かせろよ。
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