東京Night.

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「あの頃」、俺と亀梨はたしかに同じ夢をみた。 同じ空を仰いで、掴みたいものを知って、 届け、届け。と強く、祈りながら手をのばしたのに。 欲しがっていたもののカタチや、(いろ)を、どうして俺は見失ってしまったんだろう。 手さぐりで掴んだ夢を、一欠けらもこぼさずにここまできたのに。 ――どんな夢をみて、 ――どんな夢を掴んで、 ――いま、どこにいるの 「あの頃」欲しかったものを、教えて。 『かめ、いっしょに帰ろう』 『かめ、あしたなにすんの』 ――じんといるよ。俺がいなきゃお前は、 『かめ、』 『いま、なにしてる?』 幼かった「あの頃」、大人にも子供にもなりきれなかったガキの記憶。 いつもそばに、誰かにいてほしかった。 孤独なんか嫌だった。 ミラーボールの光りに引き寄せられるように、仲間をひとり、ふたりと見つけていった。 夜明け前まで、‘Close’をぶら下げたクラブの扉の前で、仲間と座り込んで話しをした。 ひとりじゃないのに、孤独を感じた。 俺はたしかにわらっていたのに。 帰りたくなった。 家じゃない、 お前のいる場所。 「あの頃」、真っすぐにお前のいる場所へむかえていたら。 俺は、お前を見失わずにいれたかな。 「……ん、じんってば」 薄暗がりのなかで、自分を呼ぶ声に目を開ける。 硬い質感のソファーに、ごちゃごちゃしたテーブルの上。 飲みかけのロックグラスを滑る水滴、いくつものカメラにケータイ。 「いつまで寝るの?」 声が、聞こえて。 「……悪ぃ、」 だけどその声より、大音量のサウンドより、 ロックグラスの氷が、渇いた音を立てて。 それが、嘘みたいにリアルに聞こえて。 「―――俺、帰るわ。」 目の前が、クリアーになる。 「えっ?!じっ…」 「おめでとう」 押し開けた扉の前に、あの日の自分を見つけて。 忘れないように、その手をひいて連れ出した。 .
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