東京Night.

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東京Night.2 『―――メッセージは以上です。メッセージを消去する場合は…』 情けねえな。 俺も、お前も。 「…ガキか」 ひとり呟いた言葉は、静かな車内にひっそりと消えた。 赤西からの意味もないメッセージを、深読みなんかできない。 諦めることは、慣れた。 「…帰ろ。」 煙草に火をつける。 肺に煙りをおくる。 そうすれば、吐き出すのは弱音でも、本音でもなくなる。 ただの煙りだから、大丈夫。 「なんとも思っちゃいねえ」 ただ真っすぐ、サングラス越しに見た東京の街並みはモノクロームで。 色なんか、無かった。 お前はきっと知らない。 お前にとって意味のないメッセージが、 俺にとって意味を探させるものにかわること。 いつから擦れ違い始めたなんて、もう考えるのも疲れたことを。 ――不意に、ドリンクホルダーに突っ込んでいた携帯が震えて、沈んでいた気持ちを大きく揺さぶる。 直感が、した。 それを外さない自信もあった。 だからこそ、 「……っでれっか‥、…‥ばぁか…っ」 『――こちらは留守番電話サービスです…』 ハンドルに顔を埋めて、溢れる感情をシャツの袖口で拭った。 サングラス越しにも、 東京タワーのオレンジの光りは優しかった。 なあ、亀梨。 『あの頃』お前がくれた言葉が、いまの俺を急かすんだ。 ――じんといるよ。 お前の存在が、俺を生かすんだ。 …‥Pull‥Pull‥Pull… 「…っいい加減電話でろ、ばあかっ!!」 …Pull‥ 『………しつけぇよ‥』 「―――!!!おまっ、何回かけたと思ってんだ、ばあかっ!!!」 『んな、おまえ、』 「亀梨、」 「いま、どこにいんの」 あれから歩いてきた道は、決して真っすぐじゃなかったけれど。 お前につづく道だったと伝えたい。 ――だって、お前俺がいなきゃ しあわせの意味わかんないだろ? End.
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