807人が本棚に入れています
本棚に追加
でもよく部屋んなか見てみりゃ、掃除も洗濯も、「やらないといけないこと」なら目の前に散らかりまくってる。
あいつがこの部屋に来てないのは3日だか4日程度じゃなかったか。
いやもっとか。一週間ってとこか。
そんなもんでも部屋ってのは散らかるもんなんだな。
あたまっから掃除も洗濯もする気はねえし、そういや腹減ったなとベットから降りて脱ぎっぱなしの服の山を跨ごした。
薄々わかってたはずなのに、空の冷蔵庫ってのはテンションが果てしなく下がる。
見事にカラだ。
なんかマジでなんっもやる気が起きねえなと思って、デリバリーすらめんどくせえと思ったけど。
人間の体ってのは食う、寝るをしっかりさせなきゃダメらしい。
腹は盛大に飯を食わせろと言っている。
苛々しながらネストテーブルの上にばらまかれてる郵便物のあいだからピザのチラシを見つけて手にする。
紛れて一枚ひらりとフローリングに落ちたのは写真。
「…んだコレ」
拾って見てみると、どこかでみたことのある写真だった。
そうだ、あいつの部屋に飾ってあったやつだ。
背景には海。
そこにいる、俺と亀梨は笑ってた。
どれくらいかぶりにあいつの部屋に行ったとき、この写真を俺の部屋にも飾りたいと亀梨に言ったことを思い出す。
初めて海に行ったときの写真なわけじゃない。
初めて撮った写真なわけでもない。
ただ撮った、なんでもない日の写真。
特別な海でも、特別な日でもない。
だけどあいつが大切そうに飾ってたんだ。
それ見たらなんか、俺も欲しくなった。
あいつはいつも、大切なものがなにかをちゃんとわかってる。
「ばかか、」
俺は10年たってもばかのままだ。
スウェットにTシャツ。引っ掴んだライダースとバイクのキー。
人がみりゃ寝起きもいいとこだってもろバレな格好だけど、んなもん気にしてられっか。
ああ、クソ。
またあいつのこと泣かしたか。
.
最初のコメントを投稿しよう!