3月4日。

4/4
前へ
/48ページ
次へ
バイクぶっ飛ばしてるあいだ、あいつのことばっか考えた。 『サヨナラ』 4文字だけのメールを、あいつ一体なんかい書いては消した。 書いて、消した回数。 俺らの10年、やり直そうと思ったんじゃねえのか。 なあ、別れようと思った回数じゃないって言えよ。 やり直そうと思った回数だって、そう言えよ。 俺はそう言う。 お前にぜったいそう言う。 だから、 サヨナラなんか、言ってんな。 合い鍵持ってるけど、なんかきょうは開けたらダメだってのはさすがの俺でもわかってる。 だから、初めてに近えお前の部屋のインターホンを鳴らす。 ちょっと指が震えてんじゃねえか。マジだせえな。 『……なに』 インターホンからお前の声。 …クソ。 「開けろよ」 めちゃくちゃ会いてえ。 控えめに開いた玄関のドア。 俯くお前。 冷戦も沈黙もこわくねえ。 その手をひいて、抱きしめる。 「あかに、」 「好きだ」 お前がいなくなることが、こわい。 「…マジ、お前がいないとか、むり。…いてよ」 特別な日じゃなくても、どんな場所でも、 お前がここにいる。 それが、しあわせなことだって。 俺ばかだから、もしまた忘れないように。言い続けて。 お前の声で。 俺の名前を。 お前の体温で。 --ふたりで生きてるってことを、伝えていてほしい。 「…すげえ格好だな…」 「るせ、」 End.
/48ページ

最初のコメントを投稿しよう!

807人が本棚に入れています
本棚に追加