恋の道

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   ぼんやりとした桃色の世界が広がっていた…… 辺りには、物凄い濃い霧が立ち込めていて自分がどこに居るかさえもわからない程、見渡しが悪い それなのに何故か、不思議と私の足だけは自らの意志のみで “何処か”を目指してるかのように、決して歩みを止める事はなかった 明るくもなく、暗くもない そんな空間で周りを見渡しても姿形(スガタカタチ)があるのは自分だけ…… 右も左もわからないのに、心の奥底が期待で満ちていて それ故に大切な場所を目指しているような気がしてならない けれど、どんなに歩いても どんなに探しても、その目的の場所には一向に着く気配がなくて…… 段々焦りと、不安だけが怖いくらいに増長していって、胸の辺りをぎゅうぎゅうと締め上げた それでも、決して歩を止める事のない脚に一欠片の望みを託して、そうしてどの位歩いたのだろうか…… 未だ、カタチつかない薄モヤの世界をただ独りきりで歩き漂い続けていたそんな時――― ふと私の鼓膜に低く、けど…… とても柔らかい声が突如として響き渡る 『ずいぶん……遅いやんか』 「……?誰っ?」 何故か物凄く懐かしく感じる その声と、どうしようも無い孤独感に至極、安堵した私は急いで振り返ったのだけど、私が見上げたそこには誰の姿も、残像さえもなくて やっぱり数秒前と寸でも変わらず、相変わらずに立ち込めては私自身を取り込もうと迫り来る濃い霧に心さえも浸食されそうになる 「だっ……誰か居ませんか?」 私が発したその声も当然のように幾度か木霊した後、最後には容赦なく厚い霧に呑み込まれてゆく 徐々に込み上がる不安と焦り 耐えきれなくなった私は 何かにすがりつくように走り出していた 何度叫んでも、幾ら呼んでも誰も答えてはくれない ――――怖いっ、怖いっ…… タスケテ――――――――― そう思い切り大声で叫んだその時だった、全ての霧を持ち去る程の強いつむじ風が走り抜ける その強い力に私の体も否応無しに呑み込まれ、巻かれて きつく閉じた瞳で前が見えない 耳元では風にすくわれた髪が 唸るようにゴゥゴゥ煩く鳴いて 体は圧迫され力強い渦の中に吸収されるかのような感覚がした ,
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