恋の道

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 またかよ……、そう呟く言葉に反論ができない と言うか、ウプウプと込み上がる胃酸と格闘しているが為、声を発せないでいると言った方が正確か そんな私に、弟は心底呆れたように新聞を閉じて深い溜め息を吐く 「姉貴も良い歳なんだしいい加減、母さんに甘えんな 好き嫌いしないで何でも食えよなっ?」 妙に大人な発言。 そう言いながら、再び香ばしい香りを揺らし彼は美味しそうにコーヒーを喉へと流し込ませている けど好きでこんな体質している訳じゃないもん マコトが言う事だって常々、自分で思っている事 母親に物凄い迷惑をかけているのは重々承知。でも、こればかりは自分ではどうしようもない いつも感じている罪悪感、故に こうして改めて……しかも仮にも自分より年下に諭されてしまいうと、なんだか心底自分が情けなく感じて だからこそ素直にもなれない 「いいんだもん日本人は米、大好きなんだもん」 口を尖らせながら意味不明な言葉を自らの苛立ちついでに吐き出して、ツイッとそっぽを向くといつもの指定席に腰を下ろした どうしてこうなんだろう…… 理由は簡単だ。先にも述べたように夢のせい 純日本人だし、将来外国人の旦那さんをもらう気は更々無いので、さしたる不都合は無いのかもしれない けどやっぱり私にとって、この現象は苦痛の何ものでも無く、その現実に肩を落として泣く泣く自分の特異体質に涙する そんな悲哀に満ちた私が自暴寸前に陥る……そんな中で、ふわりとやわらかなお味噌の匂いが鼻先を優しくかすめて 瞬時にテーブルへと視線を落とせば、いつの間にかお盆片手に寄り添った母が私の目の前へと御膳を綺麗に並べ始めていた ホクホクとピン立ちした白米 ゆらゆらと水面に漂うお葱と、無垢そうな艶肌の絹ごし豆腐とお味噌との最高な調和 一瞬で目を輝かせた私は煩く鳴るそんな自身の胃袋を黙らせようと、丁寧に合掌してお椀を両の手の平に大事そうに包みながらもふと、瞼を伏せて そして未だ涼しい顔でその他の膳を並べる母親の顔を見上げて呟く 「お母さん、いつもごめんね? 私だけのために別に和食を作るのは大変でしょぅ?」 「何言ってるのぉ、今に始まった事じゃ無いじゃない?それよりもホラッ遅刻しちゃうよ?」 いつも優しく微笑んでくれるその姿に胸がキュゥと締め付けられながらいつもありがとうと呟くと、何故だか熱くなる目頭を誤魔化すようにお味噌汁を喉へと流し込んだ ,
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