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俺は正直、何言ってんの、このパソコン? というやりきれない感触を心が感じ取っていたものの、そんな俺とは違い、リファインドの言葉に従おうとしたのが、最年長であった鶴乃だった。
「……うふ。うふふ。『お話』か。面白い、面白いじゃあないか。この私と、ここにいる五人、そしてRE:find、この七人で『お話』。
うふふ。いいじゃないか、やろうじゃないか、その『お話』とやらを。少なくとも暇つぶしにはなるだろう。何か不満があるか? 『お話』相手諸君」
今の俺なら、もしかしたら不服を唱えたかもしれないが、当時の俺はその鶴乃の異様なオーラというか、雰囲気とでもいうべきか。鶴乃のそれに呑み込まれて、機械のように首を縦に振ることしかできなかった。
結局、俺と鶴乃以外の四人も、各々様々な思考を巡らせた後、『お話』に参加することを承諾した。
みんな暇だ、そして俺も物好きだ。
『お話』は特筆することもない、本当に談話で、このフィーナリアホテルで話すような会話じゃないものであったりする。喫茶店で主婦たちがするような、街角で若者たちがするような、家族が食卓でするような、何もおかしくない、至って問題ない言葉の応酬。
問題があるとするならば、俺たちの方。
いやむしろ、『俺たち』が『話し』ていることこそ、最もおかしいことなのかもしれない。
エレベーターの扉が静かに開くと共に、視界が大きく広がる。舞踏会でもできそうな、大きな広間。ホテルの一室とは到底思えやしない風景だ。
その広間の壁際、一人の少女がRE:findとはまた別のノートパソコンを一心不乱にタイピングしていた。
「舞華」
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