第一章 case A 織畑明日摩の場合

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 少女は声に反応して、立ち上がった。その目立つコルセットやティアードスカート、姫袖が目に入る。  その姿はそう、俗にいうゴシックロリータ、略してゴスロリ。  まぁ、舞華のいつもの格好だ。小学生の舞華がゴスロリ、というのは教育的にどうなのだろうと思うが、俺の知る由ではない。  本人が好きなら口を出すの は無粋だろう。 「……です」 「一人なのか?」  そう聞くと、舞華は両手を拡げて「見ての通り」と表した。  舞華がそんなことをすると、とてつもなく似合う。あくまで、主観だけど。……注意するが、俺はロリコンじゃないし、ゴスロリが好きというわけでもない。 「……それでは、お話、です」  舞華がノートパソコンの電源を落とし、俺のほうに体を向ける。それと同時にフリフリの服装がしなやかに揺れる。あの服装、動きにくいんじゃないか……? 「RE:findはいる?」  部屋の中心に置いてあるノートパソコンに声を掛けるも無反応。リファインドも不在らしい。 「……それでは。明日摩、給食について。私は給食は出来すぎだと思うの、です」 「給食ねぇ……懐かしい。出来すぎってどういうことだ? 俺は給食食ってた頃は不満なんてなかったし、今でも食いたくなるメニューってのがあったりするけど」  ソフト麺とか。あれは人生通して、給食でしか出会えないと思う。 「私は寄食家……です。普通の味は、普通。食べさせられてる感が……キモい」 「あー……」  そうだった、舞華は常軌を逸した寄食家だ。しかも、万人が吐き気を催すような、最悪の部類の。 「……私としては、マヨ辛子ご飯を希望」 「いや、それはない」
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