第一章 case A 織畑明日摩の場合

7/11
前へ
/258ページ
次へ
「……では、メジャーなところで、七味メロンカレーを」  それ本当にメジャーなのかよ。甘いのか? 辛いのか? 「舞華、給食は栄養のことを考えて作ってくれているんだから、そんなに無茶苦茶なことを言うなよ。大変なんだぜ? 作ってる人たちは。あんまり不満とか言うなよ」  たしかに、メニュー的にないだろってのはあった。とんでもない味の代物とか、不思議な食し方をするものとか。給食ならではだと、今は思えるけど。 「ですが」  舞華は溜息を吐いて、 「……給食費を払っているのは、少数派、です。せめて、その少数派に報いがあっても、いいはず、です」  うわあ……。  嫌な話だ。  すごく嫌な話だ。 「悪い大人が増えたもんだ」  そんなことしか言えない。 「……すべての大人が、悪いわけではないはず、です」  不敵な笑みで、舞華が言う。そんな、模範生のような優れた台詞を。  なんだか、小学生に悟られている気分になったりする。なんだかなあ……。 「でも、舞華ぐらいの年頃って意味もなく大人に逆らいたくなる年頃じゃない?」  俗に、反抗期なんて呼称されるアレ。 「そんな子供みたいなこと……、しない、です」 「……」  うーん……小学生だよなぁ……、舞華は。なんだか不思議な気分になるなあ。まるで俺がおかしなことを言ったみたいだ。 「……です。明日摩は、そうですね。……大人とは、なんだと思いますか?」 「大人?」  ここで鶴乃がいればぽーんと俺をぶった斬るようなことを言うんだろうな。鶴乃は、そういう女、これ基本。  っつーと、大人とは、なんだろう。  今ここで目の前の小学生に哲学っぽいことでも言えば誤魔化せるだろうけど、それはカッコ悪いだろう。 「責任を持てるような人間が大人」  思ったよりいい感じ?に決まったんじゃないか、これ。 「……それは、妊娠した時に、ということで。なるほど」 「いや、そうじゃなくて」
/258ページ

最初のコメントを投稿しよう!

632人が本棚に入れています
本棚に追加