8692人が本棚に入れています
本棚に追加
「言う事はないが、とりあえず生きてるか確認してこい」
ぶっきらぼうに言う智明に隆二はまた溜め息をついて、今度は苦笑を加えた。
心配なら素直に言えばいいのに……。
が、そんな事を言ったらハンドルを離してでも襲いかかってきそうなので隆二は思うだけにした。
結局は何だかんだで智明も表面上では父の事を嫌っていても心の奥底では心配なのだ。
だから、
「りょーかい」
隆二も知らぬ顔でそれを承る。
智明はそれで満足したようでこれ以上この話題に触れてこなかった。
それからこれまでの事やこれからの事、どれも家で話した事ばかりだが、車内に声が途切れる事がなかった。
「おら、着いたぞ」
家を出発してから二時間と少し。
隆二達はようやく空港に到着した。
「ありがと父さん」
隆二が礼を言うと智明は首を竦めて荷物を取り出す。
「別に礼言うほどじゃないだろ。ほれクド」
そう言って出した鞄をクリアロッドに渡す。
クリアロッドはそれを両手で受け取って大きくお辞儀をした。
「あ、ありがとうございます」
「気にすんな」
今ではまるで親子のようだ。
クリアロッドはまだ若干堅さが残っているが。
休暇にクリアロッドを連れていくと連絡すると智明も歩も喜んで受け入れてくれた。
智明にはクリアロッドの事件の事は知れているので断られると隆二は懸念していたが、そんな事はなかった。
最初のコメントを投稿しよう!