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「………っ、う~頭割れる~……」
隆二は頭をさすりながら起き上がる。
どうやら気絶していたようだ。
隣でクリアロッドが仲良く寝ている。
「割れるかバカ。ちゃんと加減したぞ」
呆れたように溜め息をつき、隆二を非難する声が聞こえる。
隆二はその声のする方に顔を向けた。
「でももうちょっとスマートなやり方ないの?父さん」
そう、隆二を投げた、今まで戦っていた影とは隆二の父、智明だった。
智明は腕を組んで隆二とクリアロッドを見下ろしている。
「ったく、これくらいでダウンなんてナヨっちいな」
「下手すりゃ死ぬっつの」
未だに首を撫でつつける隆二。
「お兄ちゃん!」
不意に隆二を呼ぶ事が聞こえる。
隆二の正面、走りながら近づいてくる存在。
「お、冬弥」
隆二は首を撫でていた手を離し、弟、冬弥に手を振る。
腕一杯に何かを抱え、その頭の回りには何かが旋回していた。
「お疲れ様!」
隆二の隣に座りこみ、タオルと飲み物を差し出してくる。
隆二はそれを有り難く受け取り、自分の弟の顔をよく見る。
まだまだ幼さの残っている顔。
病気がち故、華奢な体付き。
その全ては中性的、いや、男なのにやや女気味に見える。
顔色を見ると今日は調子がいいようだ。
「そんな走り回ってまた悪くなったらどうするんだ」
が、調子が良くてもまだ完治はしていない。
隆二は冬弥の頭を撫でながら、軽く注意した。
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