―序―

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    「臨兵闘者皆陣列在前(りんぴょうとうしゃかいじんれつざいぜん)」  少女は横、ついで縦と順に二本の指を立てた腕を振る。  北東を強く見据えながら。 「天蓬(てんぽう)……」  今度は前に一歩踏み出し、そこに後の足を引き寄せてから、左右に踏み鳴らす。そしてまた一歩踏み出して…… 「天内(てんない)……天衝(てんしょう)……天輔(てんぽ)……天禽(てんきん)……」  その歩き方を(しゅ)を唱えながら、繰り返す。  腕も先程と同じ動きを繰り返していた。 「天心(てんしん)……天柱(てんちゅう)……天任(てんにん)……天英(てんえい)……」  ぴたっ……と。  両足を揃え動きが止まる。 「朱雀(すざく) 玄武(げんぶ) 白虎(びゃっこ) 勾陣(こうじん) 帝台(ていだい) 文王(ぶんおう) 三台(さんだい) 玉女(ぎょくじょ) 青龍(せいりゅう)」  呪を変え、再び腕を振る。  瞳は前方、北東を見つめたまま、ぴくりとも動かない。 「天為我父(てんいがふ)……地為我母(ちいがぼ)……」  ついで、一呼吸おいて指を立てたまま、腕を左斜め下に動かした。 「在六合中(ざいろくごうちゅう)……南斗北斗(なんとほくと)……三台玉女(さんだいぎょくじょ)……左青龍避万兵(させいりゅうひばんぺい)……右白虎避不祥(うびゃっこひふしょう)……」  ゆっくりと五芒星を描いていく。 「前朱雀避口舌(ぜんすざくひこうぜつ)……後玄武避万鬼(ごげんぶひばんき)……前後輔翼(ぜんごふよく)……」  すっと中心に指を下ろす。  ふっ……  指先に唇をあて、軽く息を吹き掛けた。
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