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『さくら』はそれに応えようと、再び言葉の封印を外そうとする――。
「あ……さ……………ひ…………ご…………ね」
振り絞られる言葉に、朝日は涙した。
朝日は、もう一度笑顔を作り直すと『さくら』に語り掛ける。
「『さくら』随分早かったね…………まだ三回しか朝日を迎えてないよ……」
『さくら』の顔にも笑みが浮かんだ。
「お……そく……な………ご……んな…………い」
その光景は誰の眼にも奇跡と映ったに違いない。
だが、それは奇跡では無かった。
医者からの宣告は100%そうなるとは限らない。
そんな所にですら、揺らぎが生じるのが現実である。
『さくら』の声を出す力は、回復しつつあった。
ただ、朝日に会わせる顔が無いという思いと、治らないという思いが、挑戦するという努力を忘れさせていたのである。
『さくら』にそれを思い出させたのが、朝日という存在であった――。
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