希望の歌

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朝日は『さくら』の手を取って、『狩宿の下馬桜』を目指した。 下馬の大樹は、桜を咲かせながら陽光に胸を張り、風にその身を任せている。 陽光を背に抱き締め会う二人の姿は、シュウヤの思い描いたものと全く変わりはなかった。 すると、一台のトラックがこちらを目指して走って来るのが解った。 トラックは、下馬の桜付近に停まると、その荷台が開き始めた。 それと同時に、助手席から降りてくる者がある。 『橘孝太』その人だった。 「おーい!」 そう叫ぶ孝太の後ろには、デルタチェリーが立っていた。 荷台に現れたのは、デルタチェリーの愛用楽器達。 「シュウヤ。お疲れ様!」 「よう!シュウヤ!ここで演奏してみないか?」 「お二人さんおめでとう!!」 シュウヤは、すぐさま駆け寄ると、ギターを手にした。 …… ………… 偶然って、何処からくる? 必然って、誰が決めているの? あなたに声を掛けられなければ 私はきっと後悔していた。 あの日あの桜の下で あなたは、笑ってくれた。 私は知っていたの。 あの日あの樹の下で逢えること。 私は待っていたの。 長い時を重ねては繰り返して それが私の必然。 運命と人は言うけれど 私は知っています。 必然て、私が決めた道。 あなたが忘れたとしても 私は遠くで覚えています。 ………… …… 下馬の桜で聴くデルタの『さくら』は、新たな命を吹き込まれたように、新しい音律を奏でていた。
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