辿り着いたもの

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あれから二年が経った――。 街は年越しに向けて、いつもより騒がしかった。 去年から朝日の隣には、網膜の手術を施し続け、一年間の療養生活を終えた『さくら』がいる。 二人して見ていたDVDを再生し終わると、朝日は『さくら』に尋ねた。 「なっ!やっぱり、『さくら』ってサクラの生まれ変わりなんじゃない?」 『さくら』はにっこりと笑ってそれに応えた。 「と言うことは、朝日君て源頼朝さんなの?」 「んなこたないよっ」 「じゃあ、私もサクラじゃないと思う」 「でもさ。去年まで、眼も見えなければ、口の開け方も忘れてただろ?」 「ひどぉーい。忘れてたわけじゃないもん!!」 「あはは。ごめんごめん」 「朝日。『さくら』ちゃん。もうすぐ結果出るわよー」 「りょ―かぁーい!」 母親に呼ばれた二人は、リビングにあるテレビの前へ移動した。 すでに朝日の母親は、テレビに夢中であった。 「では参りましょう。日本音楽大賞の発表です」 『日本音楽大賞』 日本中のアーティストが目指す場所。 その演出は派手であった。 ドラムロールが終わり、スポットライトが当てられた先には、彼らが居た――。 「見事大賞となられたデルタチェリーの皆さんに、来年の抱負などを伺ってみましょう」 「では、リーダーのシュウヤさん。来年はどのような年にしたいですか?」 シュウヤの顔は、少し照れているようにも見えた。 「今年と変わらず、来年も一人一人の人生に関われるような楽曲を、創り出していきたいと思っています」 「やっぱりかっく良いなぁ!!シュウヤさんて」 「朝日も、同じくらいかっこ良いよ」 「おっ!!『さくら』!どこでそんな技覚えたの?」 「技って何よぉ!」 「怒った顔も可愛いね~。写メ撮っちゃる」 「やぁめてよーもう~」 ――完――
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