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三月に入って間もないというのに、今年も桜が咲いた。
静岡の地も例外では無く、この数年、開花予報はあまりあてになっていない。
今春は、自分にとっても高校を卒業する春になる。
毎年やってくる春という季節。
この時期に、桜を見るといつも思う。
桜というものが初めて花を咲かせた時代から、いったいどれだけの人達が、この花に見送られてきたのだろう。
そう思うようになったのは、初めて人との別れが、こんなにも苦しくて、そして悲しいのだと知った3年前。
中学を卒業する頃からだ……。
卒業式の中。
大きく開かれた体育館の外で、ちらほらと開き始めた桜の花を見ながら、俺はそんな事を考えていた。
式も終盤に差し掛かると、校長が演壇に立つ。
「今年も桜が咲き始めましたね」
そう語り始める校長の話は、きっと退屈だ。
口調に、え~。だの、ですから。などという場持たせの言葉がないところを見ると、きっと毎年話し慣れている内容だろう。
お決まりで話しているのだと思うと、さらに聞く気が失せた。
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