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バス停のすぐそば、休田の畦道に立つその樹は、アスファルトの道を浸食するように根を伸ばしていた。
樹の幹は大人2人が両腕を広げた位太く、青々と繁った葉が落ちてくる雨を防いでくれる。
私は制服の水滴を払いながら、曇が覆う灰色の空を見上げた。
雨は嫌いだ。
濡れるし、傘を持ち歩くのも面倒だし、どんよりとした空を見ているとなんだか気持ちまでブルーになる。
腕時計を見て、ため息を落とす。
「あと25分……」
「何が?」
突然聞こえた声に、私は辺りを見回す。人影はない。
「……?……」
「ここだよ」
樹の反対側からヒョイと顔を覗かせて、その人はにこりと笑った。
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