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(誰……?)
私は眉をひそめる。
色素の薄い肌と瞳、年は二十歳前後だろうか……淡い緑の着物に丹前を羽織り、素足に下駄という、今時には珍しい格好をしている。
硬質な硝子のような美貌は、日本人離れというより『人間離れ』して見えた。
「僕は ナラ」
「ナラ……?」
「ナラケンの『奈良』」
ナラは細い指で宙に『奈良』と書いた。
ナラは私の隣に立ち、灰色の空を見上げる。
「いい天気だね……」
「……はっ?」
私はナラを見、相変わらず灰色の空を見上げた。
霧のような雨は、まだやみそうにない。
「雨だよ……?」
「……雨は嫌い?」
「……嫌い……」
「そう?僕は好きだよ……」
そう言って笑う。
近寄りがたい雰囲気が消えて、子供のような無邪気な表情にドキリとした。
「……」
「…………」
(なんか…気まずい……)
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