ナラ

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止まない雨……他に雨を凌ぐ場所もなく、私は正体不明の『ナラ』と並んで樹の下に立っている。 (呉服屋の若様か何かだろうか……?) 「君……あの学校の生徒?」 「……そうだけど……」 「この辺りの子じゃないよね?」 「……」 無言のままうつむく私に気を悪くする様子もなく、ナラは視線を上に向けた。 腕を差し伸べ、雨の雫を受けながら、楽しげに鼻歌まで歌っている。 不思議な旋律だった。 何処かで聴いた気がするのに思い出せない。 妙に心地よく響いて、私は目を閉じた。 不意に旋律が途切れ、ナラが呟く。 「ところで……何が25分なの?」 「え……?」 私は目を開けてナラを見、腕時計を見た。 「わっ……」 一分前、見ればバスがすぐそこまで来ている。 慌てて樹の下から駆け出す。 バスに乗り込み振り返ると、樹の下にナラの姿はなかった。
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