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「あれが北斗七星だよ、ほら、柄杓(ひしゃく)みたいなカタチしてるやつ」
大宮一海(おおみやかずみ)はそう言ってガキみたいに頬を赤くしている。
「星なんか見て面白いか? どれも同じじゃねえか、取って喰えるわけでもねえし」
呆れたように言った俺を見て、大宮は少し表情を曇らせた。
「まあ、そうだけどさ……。でも、星見てたら落ち着くんだ、どうしてかわからないけど」
そしてまた北斗七星を眺める。
大宮は俺の下宿先の隣人で、ゼミも同じだった。
人の顔色をうかがう奴で、いつもおどおどしていた。身体つきは小柄で、それでもって華奢で、色白でどちらかといえば内にひきこもるほうで、友人は少なかった。
そんな大宮を、俺も最初のうちは避けていた。何より、「大宮はホモらしい」という噂が流れていたからだ。
偶然、中学が同じだった奴が同じ大学に進学していて、友人にふざけ半分で語ったことがいつの間にか他の奴らにも知れ渡ってしまったらしい。
中学校の卒業式の日、大宮がクラスメイトの男子を裏庭に呼び出して告白しているのを目撃した奴がいる、というのだ。
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