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「俺は知ってたけどね」
大宮は小さく笑って言った。
「ゼミ一緒になって、神崎君の顔を見たとき、隣の人だなってすぐわかったんだけど。
神崎君、新入生コンパのときに遅れて来ただろ? それで何となく顔覚えてさ?
俺、用事があって先にコンパから帰ったんだけど。用事終えて帰ってきたとき、偶然、神崎君が俺の隣の部屋に入ってくの見えてさ?」
話してみると、それなりに付き合いやすい奴ではあった。ただ、俺が大宮と話すのは大宮の部屋で、それも二人きりのときだったが。
ゼミの中では、前と比べて少し話すようになった程度で、距離は相変わらずだった。
何か嫌なことがあると、俺は大宮の部屋に転がり込んで愚痴った。
大宮は静かに話を聞いてくれて、ぽつりぽつりと感想やアドバイスを述べるのだった。
腹が減ると大宮の部屋に転がり込んで、鍋をしたり、焼肉をしたりした。
大宮は生活費に困ることはないようだった。冷蔵庫の中にはいつも何か食料が入っていて、ご飯もいつも炊かれていた。
テストやレポートが近くなると、友人の誘いを断わって、自分で勉強するからと言って大宮の部屋に居座ることもあった。
大宮のヤマはけっこうよく当たるのだ。
俺が起きるころには大宮はもうすでに起きていて、寝る時間は大抵同じだった。
時々、俺の夜更かしにつきあいきれなくなった大宮がダウンして、先に眠ってしまうことはあったが。
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