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それでも、大宮と俺の、友人なのか知人なのか、な妙な付き合いは続き、よく晴れた秋の夜、外に出たいと言い出した大宮と一緒に車を走らせて夜の海なんぞに行ったのだ。
もう11月の後半だ。寒い。
この季節になると、海の波の音も、寒さをひきたてる音にしかならない。夏のあの涼しげな夜の浜はどこへやら、といった感じだ。
真っ暗な浜辺に、懐中電灯で足元を照らしながら下りていく。
この寒い中、大宮は嬉しそうに星なんか眺めている。
あれがカシオペアだ、北斗七星だ、北極星だ、とまるで中学生の理科の授業のような説明を終えると、大宮は小さく息をついて言った。
「北斗七星ってさ、秋には地平線に沈みかかるんだ」
確かに、空に輝いている北斗七星は、地平線に近い位置にある。
「なんだか、ひしゃくが水をすくってるみたいだよね」
大宮の視線は、ずっと北の北斗七星に注がれていた。
「北斗七星は死を司るって聞いたことあるけど。
北斗のひしゃくで水を飲んだら、不老長寿になれるとか、死人をよみがえらせるとか、そういう伝説ってないのかな?」
まるで魂を吸い取られたかのように、北斗七星に釘つけになっている大宮を横目に見ながら俺は答えた。
「死を司る星だったら、北斗のひしゃくがすくう水は死に水だろ?」
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