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「そこ、危ないからな、気をつけろよ?」
けっこう大きな流木が浜に転がっているのに気づいた俺は、振り返って大宮に告げた。
懐中電灯は、どうやら電池が切れかかっていたらしい。足元を照らすだけで精一杯、といった感じだ。
大宮は歩くのがとろい。だから俺は時々振り返って大宮を待つことにしていた。
先に目的地についてしまってから大宮を待っているよりは、時々こうやって待っていたほうがあまり長い時間待たなくていいからだ。
「ごめん、今行くから……うわあ!?」
気をつけろ、と言ったのに、流木につまずいたらしい。
大宮の身体が俺に寄りかかってくる。それも、完全に前のめって、全体重をかけてきやがった。
俺も流石に、突然のことで支えきれなかった。そのまま浜にしりもちをついて倒れてしまう。
「いって~……。だから気をつけろって言っただろ!?」
「ご、ごめん!」
慌てて大宮が身体を起こそうとする。
俺の胸に置かれた手は汗ばんでいて、とても熱かった。
暗くてよくは見えなかったが、大宮の顔は動揺を露にしていて、赤面していたような気がする。
俺はふと、あの噂を思い出した。
大宮が同性愛者だという、あの噂。
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