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夏が来た。
暑いだけで嫌な季節だと言う人もいるけど、僕は夏が大好きなんだ。
だってこの季節にはあの花が咲く。
ギラギラと輝く太陽に向かって高く高く伸びて大きな大きな花を咲かせる向日葵。
夏の日射しを浴びて力強く咲き誇る向日葵の花は、あの人の笑った顔に良く似てる。
その笑顔を思い出してクスクスと笑いながら、僕は庭に咲いた向日葵を見上げていた。
去年植えたばかりでまだ1本しか咲いていないけれど僕にとってみれば十分だった。
「お、咲いたな!」
突然後ろから声がして、僕は後ろを慌てて振り返る。
「金ちゃん…。うん、咲いたよ」
満面の笑みを浮かべて近付いてくる金ちゃんを見て僕は嬉しくて早く早くと手招きした。
「大きなったなぁ…こないだ見た時は俺より背ぇ小さかったのに」
「植物の成長は早いんだよ」
他愛もない話をしながら二人並んで向日葵を見上げる顔は自然と笑っていた。
夏が終われば花は枯れる。けれど来年また咲く為に沢山の種を付けてくれるだろう。
「来年は庭いっぱいに咲けば良いな」
「そうだね、また来年二人で見上げて笑いたいね」
また来年。
二人一緒に夏を迎えて。
向日葵と一緒に笑おうよ。
END
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