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「ここから飛び降りた死ねる?―」
振り返った少女、今本 冬佳を見て剛知は息を飲む。
雪のように白い肌。
赤いふっくらとした唇は少し荒れている。
腰まである栗色のストレートな髪を春風に靡かせながら、吸い込まれてしまいそうな覇気の無い大きな瞳を剛知に真っ直ぐに向けていた。
整った顔立ちは美人だが、まだ幼さを残す可愛さを持っている。
まるで幼少期に見た絵本の中の綺麗なお姫様を見ている様な気がした―
なのに…
冬佳の口から発された、冷たい言葉。
善も悪も無い言葉だった。
「えっ…」
剛知は言葉に詰まってしまう。
「今度は死ねるかな?―」
黒く光りを宿さない瞳が剛知に語り掛ける。
返す言葉は見付からない。
「早く楽になりたい―」
冬佳は薄く微笑みを浮かべた。
とても綺麗なのに…
冷たく悲しい顔をしていた―…
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