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「お前がカイトか。」
カイトが耳にした彼女の第一声がそれだった。
姿勢良く、髪の乱れすら無いように直立している自分の眼前には、ひとりの少女が立っていた。
「はい。」
短く答えるカイトに、けぶるような金髪を腰まで伸ばし、余計な飾りはなくとも仕立ての良い服に身を包んだ彼女は、自分を値踏みするように、または興味深そうに見ている。
みずみずしい草原の緑と同じ瞳の色が、今は期待と何かの感情にうるんでいるように輝いている。
「あなたが。俺のマスターですか?」
マスター、と口にした途端、少女はぱっと破顔する、それはまるで気候に負けず咲く野の小さな花のようだ。
あでやかでは無いがつつましく凛然としたたたずまいの。
華奢な体つきに対してその中に在る精神は、存外芯が強いのかもしれなかった。
「そうだ。わたしが今日からお前のマスター、レティシア・ハートレス。」
「レティシア・ハートレス・・・・。」
「レティと呼べカイト、わたしの歳は14だ・・・多分。」
「多分?」
多分てなんだろう、とカイトは不思議に思ったが、先刻馬車の中で付添い人に聞いた事を反芻して納得する。
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