【晩秋】

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 穏やかな時間はふたりを優しく包み込むように流れた。  けれども、それは長くは続かない。  秋の終わり、レティシアは身体の不調を訴え、床につき、カイトは彼女と会えない日々が続いた。  マスターは大丈夫かなあ、とカイトは自室でただ物思いにふけるしかない。  彼には祈る神を持たなかった。  彼に在るのはただ、主の存在だけだったから・・・。 「マスター・・・俺、マスターに会いたいです。」  繰り返される夜のしじまに、カイトは募る思慕にそうつぶやくしかない。  または、白々とした月下のもとで、歌を謳いたいと。  だって俺は・・・ボーカロイドですマスター・・・あなたのために、俺は謳いたいんです。  そう、願うしか。
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