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熱い茶の入ったポットから、慣れた手つきで果実の香りのついた茶をいれ、カイトはレティシアの前に置いた。
その茶碗も例外なく高価なもので、金の描き模様が初夏の日差しにきらりと光る。
輝きが、レティシアの髪みたいだな、とカイトは思いながら、続いて菓子の皿を茶のとなりに置いた。
ふくいくとした茶の香りが鼻腔をくすぐり、柑橘類独特の爽やかで気持ちの良い刺激が気分をすっきりさせてくれる。
レティシアがとりわけ好きだという茶だから、せめてこれだけは上手に入れられたらなあと屋敷に来て最初に覚えた仕事だ。
「なあお前、・・・ぼーかろいど、なんだって?」
カイトがこの屋敷に来て、もう数ヶ月経っていた。
すっかり屋敷での生活にも慣れ、自分の部屋を与えられたカイトは日中こそレティシアの相手をさせられているが、夕方から翌朝までは自分の時間を持てるようにもなり、割と自由が与えられていると言ってよかった。
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