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紅く染まった空を後ろにして、俺たちは帰っていた。
気を利かしてくれたのか、莉央は俺のカバンを持ってきてくれていた。
少し俺と距離をとりながら、「私って優しいでしょう?」だなんて言っている。
優しいかどうかは別として、いつもより離れた位置にいる莉央がどうしようもなく悲しかった。
……分かってる、俺がそうさせたことくらい。
だけど、悲しいものは悲しいんだよ――――。
無言で歩く俺たち。
それは気まずい以外何ものでもなかった。
莉央、ごめん……
俺は莉央の制服の端をつまんだ。
「どうしたの?」
それに気付いた莉央は、優しく俺に問掛けてくれた。
それはなぜか俺の涙を誘ってきて俺は必死に涙をこらえた。
「…………ごめん……」
小さく、小さく呟いた声。
それでも、莉央にはそれが聞こえたらしい。
「チビ……ううん、扶仁。
ああいうのはちゃんと考えて行動しなさい?
じゃないと、将来後悔しちゃうからね?」
そう言って微笑んだ莉央はとても綺麗で。
「違う、莉央。
俺は……俺は――――」
止まってしまう俺の足。
今から言うことにどうしようもなく緊張してしまって、喉がカラカラになってきた。
後悔なんて、絶対しない。
よく考えようとしても、すべて狂わすのは莉央、お前なんだ。
「扶仁?」
小さく首を傾げる莉央はどうしようもなく可愛い。
……なんなんだよ、コイツ。
綺麗だと思ったら、可愛くなりやがって……
なんか心臓に悪い。
莉央に振り回されすぎだろ、俺。
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