焦りと告白

6/11
前へ
/480ページ
次へ
紅く染まった空を後ろにして、俺たちは帰っていた。 気を利かしてくれたのか、莉央は俺のカバンを持ってきてくれていた。 少し俺と距離をとりながら、「私って優しいでしょう?」だなんて言っている。 優しいかどうかは別として、いつもより離れた位置にいる莉央がどうしようもなく悲しかった。 ……分かってる、俺がそうさせたことくらい。 だけど、悲しいものは悲しいんだよ――――。 無言で歩く俺たち。 それは気まずい以外何ものでもなかった。 莉央、ごめん…… 俺は莉央の制服の端をつまんだ。 「どうしたの?」 それに気付いた莉央は、優しく俺に問掛けてくれた。 それはなぜか俺の涙を誘ってきて俺は必死に涙をこらえた。 「…………ごめん……」 小さく、小さく呟いた声。 それでも、莉央にはそれが聞こえたらしい。 「チビ……ううん、扶仁。  ああいうのはちゃんと考えて行動しなさい?  じゃないと、将来後悔しちゃうからね?」 そう言って微笑んだ莉央はとても綺麗で。 「違う、莉央。  俺は……俺は――――」 止まってしまう俺の足。 今から言うことにどうしようもなく緊張してしまって、喉がカラカラになってきた。 後悔なんて、絶対しない。 よく考えようとしても、すべて狂わすのは莉央、お前なんだ。 「扶仁?」 小さく首を傾げる莉央はどうしようもなく可愛い。 ……なんなんだよ、コイツ。 綺麗だと思ったら、可愛くなりやがって…… なんか心臓に悪い。 莉央に振り回されすぎだろ、俺。  
/480ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1009人が本棚に入れています
本棚に追加