揺れ動く心

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   ――――バタン! 勢いよく玄関の扉を閉める。 「はぁ……っ……はぁ……」 家に入った途端、私はズルズルと床へとへたり込んだ。 思考が追い付かない。 頭のなかがぐちゃぐちゃ。 “格好付けんなよ” そう言って、私の手の甲にキスした扶仁。 思い出すだけで、顔が馬鹿みたいに熱ってしまう。 「……扶仁のくせに、なんでこんなドキドキさせるのよ……?」 キスされた右手の甲を左手で抑える。 まだ覚えている扶仁の唇の感触。 消えてはくれない感触。 あったかくて柔らかくて――… 「や、やだ!  私ってば何考えて……」 ブンブンと頭を振り、扶仁のキスの感触を追い出そうとする。 私は年上の人がタイプなの! だから、扶仁なんてめじゃないんだから! そう自分に思い込ませ、私は足を奮い立たせた。 あのキスは忘れよう――。 そう自分に言い聞かせながら、私は台所へと向かった。
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