1008人が本棚に入れています
本棚に追加
/480ページ
「大きくなったら僕が莉央ちゃんをお嫁さんにするからね!」
そう言って、無邪気に笑いかけてくれたあの頃。
あの言葉はプロポーズだったのだと思うけど、今やそれは私にとって、いい思い出のようで。
あの頃の扶仁は可愛いくて、足も早くて、優しくて、いつも私の後をついてきて。
そんな弟みたいな扶仁が私は大好きだった。
……なのに。
「おい、莉央。
ジュース買ってこい」
「はぁ?! なんで私がチビの為に動かなきゃいけないのよっ?!」
いつから、コイツはこんなにも憎たらしくなったのだろう?
「あ? 莉央ちゃんはまた俺に逆らうんだー?」
あの頃の無邪気な笑顔はどこへ行ったのか、ニコリとどす黒い笑顔を浮かべるチビ。
「こんの……チビっ!」
「寝言は寝て言え」
「本当の事でしょうがっ!」
――――お昼休み。
私とチビこと、扶仁の間ではこんな会話がいつも飛び交っている。
私の日常には必ず、扶仁がいる。
いない日なんて、きっとなかったと思う。
最初のコメントを投稿しよう!