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「ただいま、ママ!」
出来るだけ平常心を保ち、私は台所に立っているママに話しかけた。
「あら、帰ってきてたの?
おかえりなさい、莉央」
ママは私に気付くと、振り向いてふわりと笑った。
肩まで伸びる金髪の髪に、うさぎのアップリケを付けたエプロンを見事に着こなした目の前にいる女性――それが私のママ。
「今日はね、ご飯たくさん作っちゃったのよ。
だから、扶仁くんも呼んで五人で夜ご飯食べない?」
ずいぶんと上手くなった日本語でとんでもないことをいきなり言い出すママ。
「え?! ふ、扶仁と?!」
もちろん、私が驚かないわけがないわけで。
私は思わず声が裏返ってしまった。
「どうしたの、莉央?
毎度のことでしょう?」
私の反応を不思議そうにするママを見て、私は冷静に戻った。
「……あ、いや、ちょっとビックリしただけ。
ホント何にもないよ、ママ」
私はママから視線を反らし、台所を出ようとクルリと方向を変えた。
……これ以上ここにいたら、嫌でも扶仁のことを考えさせられる。
そう思った私は少し足早に台所を出た。
「……莉央、あなたもしかして……」
小さく首を傾げ、呟くママの声に気付かずに。
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