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「……この暴力女」
ぼそっと扶仁の方から聞こえたけど、私は気にしなかった。
私はまたご飯を食べることに集中した。
……でも。
頭ではまったく別のことを考えていた。
……私は、確かに揺らいでしまった。
扶仁に対して、幼馴染みを越えた感情を持ちかけた。
本当に危ないところだった。
このままの私だと、私は扶仁を、チビを好きになってしまう。
年下なんて恋愛対象に見ていなかったのに……
私だってプライドがある。
今までの私の信念は曲げない。
私は今の日常でいいんだから。
何も変わりたくない。
変わらせたくないの。
「おい、莉央」
「今考え事してるから黙って」
誰かが話しかけてきたけど、私は適当にあしらった。
私は――――
「口全開」
つんつん、と誰かが私の頬をつついた。
それにより、私の思考も強制終了させられた。
「~っもう! 今考え事してるって言ってるでしょ!」
私はイラッとし、ガタンと席を立った。
ポカン、とした顔でみんなが私を見る。
そんな中で扶仁が口を開いた。
「お前、ご飯粒ついてる」
…………あ。
気付いた時は既に遅く、私はみんなに笑われてしまった。
うぅ、穴があったら入りたい……
私は赤面しながらも、ゆっくり席に着いた。
ご飯粒を取るのを忘れずに。
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