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莉央に置いて行かれた屋上で、俺……扶仁は感傷に浸っていた。
昔から俺にとって、莉央は唯一の女の子だった。
どれだけの数の女子を見ても、莉央しか可愛いく映らなくて。
「…………莉央……」
莉央を呼ぶ声は莉央に届くはずもなく、春の日差しへとゆっくり溶けていく。
俺は中二でまだまだガキかもしんねぇけど。
――――でも。
莉央を想う気持ちは誰よりもデカいはずなんだ。
何よりも、誰よりも見て欲しいんだよ、莉央――――。
…………いつからだろう?
莉央が俺のことを“扶仁”ではなく、“チビ”と呼ぶようになったのは。
少し高くてふんわりとした莉央の声。俺が一番大好きな声。
お願いだから、また“扶仁”って呼んでくれよ――――。
なぁ、莉央――――。
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