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静かな暗い路地で王は女性をゆっくりと壁にもたれるように座らせる、女性に生気は無く、ダラリと首を垂れ、それでも美しいアンティークドールの様に座っていた。
吸血鬼は処女を好み、そして闇の王とまで呼ばれる男の狙いは処女のみ。
そんな王が食事の前に与える一時の甘い夢。
人生最後の甘い夢。
王は息の無い女性の首筋に残る傷口に優しくキスを落とす。
「貴女の血は温かく美味でしたよ、良い夢ミク」
王は再び音も無く闇へと帰っていった。
王が帰りついたのは、誰も近づかない、暗い森の奥深く。
古びた大きな城、手入れも去れずに長年放置されたその城は今にも崩れてしまいそうな程の年期を感じる。
「お帰りなさいませ、旦那様」
彼を出迎えたのは二人の小さな子供。
高級な人形の様な美しい容姿、そして生気をまったく感じない冷ややかな目。
「旦那様今日はお客様がお見えになっていられましたよ」
その言葉に王は目を細め口を開く。
「それで、私の留守中に訪れたお客様をちゃんと丁重にお迎えしてくれたかい?」
王の問いに幼い使用人は顔を見合わせ主人にむき直り同時に口を開いた。
「はぃ、旦那様」
王は不敵な笑みを浮かべ二度軽く頭を撫でると指を己の口元へ運ぶと指を軽く噛む。
指先に紅い血の玉が出来る、王は自分の血を一度舐めとり、指を使用人へと向ける。
「もう、戻っていいぞ」
言葉と同時に使用人達は姿を血へと変え、吸い込まれるよう王の指先にある傷口へと戻っていった。
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