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19歳の日
やっとここに来た。
決心するのに5年かかったの。
アパートの三階、一番端の部屋。
ピンポーン
「ハイ、どちら様?」
若い男の子が出てきた。
「すみません、間違えました」
やっぱりここにいる。
少し変色したフローリングにユニットバス、ここは少しも変わらない。
あぁ、早く捕まえなくては。
「迎えにきたのよ、行きましょう?」
「お姉さんが来て良かったぁ、私10年も一人であそこにいたんだよ、彼もいないし。」
彼女は素直に私に従って出てきた。状況を把握していないせいだ。
「お姉さん!彼も一緒でしょ?早く逢いたいよ~」
私は彼女を連れて階段を下りる。今は繋いでくれない左手が涙を流す。
「あっ!お姉さん、左手が泣いてるよ」
「ええ、目からの涙は止まったけど左手はまだなの」
私は彼女に鉛筆とノートを渡して日記を書くように言う。
「今日はどんな日だったの?」
「今日はデートの日。今朝から彼と映画に行って、ランチを食べて、5時には帰ってきたよ」
幸せそうに彼女は話す。
「その後はどうするの?」
「夕食は私が作って、部屋で食べて、今夜は彼は泊まるんだぁ」
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