『イト』

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 学校から帰ると、部屋から細い糸が垂れ下がっていた。 「何だ? これ」  引っ張ってやろうと手をのばすが、嫌な予感が身体を駆け巡る。  これを引っ張ったら、何か起きてしまうのでは無いだろうか。何か良からぬ事が。  よくゲームとか漫画であるじゃないか、良く解らない物に不用意に触ってしまったせいで、とんでもない事になってしまう事が。  それだけは避けたいが、どうも気になってしまう。  一体何が起こるのだろう。これを引っ張った先に待ち受ける非日常を思うと、好奇心がくすぐられてしまうのだ。  触ったら、感電するのだろうか。それとも異世界への扉が開いたり、何かの精霊が僕に助けを求めてきたりするのだろうか。  僕は決意した。この糸を引っ張ってやる。  だが、素手で引っ張るよう事はしない。ゴム手袋をはめ、割り箸で引っ張る。そうすれば、感電する事はないだろう。 「よし……」  僕は慎重に、割り箸で糸をつまんだ。  そのまま、不安と期待を込めて、思い切り下方へと引っ張る。    ――ぷつん。    手応えは、あまりにもなさすぎた。  そして、何も起こらない。 「何だよこれ……」  空回りの期待は、へにゃりと落ちた糸のように虚しく散ってしまった…………          ――Fin――  
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