君、逃走中

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あの手この手使ってみたが、結局アドレスを聞き出せないまま教室に到着してしまった。 (何気にガード固すぎ……) 若干落ち込む尚杞を尻目に、悠左がとても嬉しそうな笑みを向けてきた。 「連れて来てくれてありがとう。私はここで大丈夫だよ」 だからもう関わってくれるなと言外に言われ、頭をもたげたのは尚杞の負けん気。 (誰がこのまま引き下がってやるか。俺のテクでメアドと言わずマンションの部屋番号まで聞き出してやる!) 勝手にマンション住まいと決めつけて、尚杞は悠左に劣らない優しい笑みを浮かべてやった。 「いーって。ここまで来たんだから最後まで付き合わせてよ」 「いや、君に悪いよ」 「いいのいいの。それに、君じゃなくて尚杞。ね?」 「…………」 強引な尚杞に呆れたと顔に出す悠左。 それに気付かないふりをして、教室に向かって声をかけた。 「成宮幸さーん。お兄さん来てるよ~」 「……えっ?私?」
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