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「じゃあ、今日はもう帰れ。気をつけてな」
「うーい。んじゃ」
凝った首の骨を鳴らして、喜々として職員室の扉を開け放った。
広々とした廊下が見れるはずだったのだが――――
「うぉっ!」
目に入ったのは黒。
というかドアップの顔で、尚杞は知らず後ずさってしまった。
真っ黒の髪に真っ黒の瞳、そんでもって真っ黒のスーツに身を包んだ男は、驚いた尚杞を見てにっこり微笑んだ。
(なんだこいつ…すっげぇ綺麗……)
その男から目が離せなかった。
すっと通った鼻筋、大きめの二重の瞳に、それとは逆に冷酷そうな印象を残す薄い唇。
すべてが完璧な配置を成していた。
「失礼」
男が声を発して、尚杞は見とれていた自分に気付いた。
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