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「そういえばあんた、名前なんてーの?」
ふと思い付いたのは、教室が目前に迫る階段に差し掛かったときだった。
特に会話という会話もしていない尚杞からその質問は怪しかったらしく、怪訝そうな視線を向けられる。
「あ、妹さんって誰なのか気になって」
慌ててそう付け足すと「…ああ」と納得してもらえたようで、とりあえずほっと安心する。
(あんたに興味があるから知りたいとか言ったら、即行で逃げられそうだもんな)
尚杞の考えなど露知らず、男は優しい顔をした。
「成宮幸(なりみや さち)というんだ。知ってる?」
「……え?あ、んと…たぶん」
言い訳が災いしたらしい。
まあ普通、妹が気になると言われたらそうなるんだろうけど。
優しく妹のことを話す男を見つつ、
正直妹なんかに興味がなかった尚杞は自分の頭の回転の悪さを呪った。
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