第九章 夢の終わりに

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背水の陣(はいすいのじん)の言葉どおり、もう後がないなか、本丸にいた者達は、すでに弾薬が尽きてしまっているのにも関わらず、よく戦った。 早朝から始まったいくさは、すでに昼近くとなっていた。 蘆塚が伝助の方を見ると、伝助が、自らと同じぐらいの年齢の幕府軍の武将を組み伏せて、ちょうど槍を突き刺そうとしていたところであった。 伝助が、槍を突き刺そうとした瞬間、幕府軍の武将が、急に命乞いを始めた。 『た……、助けてくれ。 み……、み……、見逃してくれ。 女房と子供、年老いた母親が、家で待っているんだ! お願いだ、後生だから……』 『伝助いかん! 敵に情けをかけてはならん!』 蘆塚は、相対していた幕府軍の武将を、一刀のもとに切りふせて、血相を変えて、急ぎ伝助のもとへと向かった。 伝助の、槍を突き刺す動きが止まった瞬間、 命乞いをしていた男が、短刀を取り出して、伝助の胸を突き刺した。
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