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『伝助ーーー!』
蘆塚は、伝助のもとへ行き、命乞いをした男を即座に斬り、倒れようとした伝助を、あわててだき抱えた。
『馬鹿者!
おぬしの優しさが命取りになると、あれほど言うたであろう!
どこをやられた!
胸か?』
『あ……、あ……、蘆塚様……。
オ、オラ、蘆塚様を……お守りすると言うたのに……。
あ……、足を引っ張っちまって……』
『無理にしゃべらずともよい!伝助』
グボッ
伝助が、口から鮮血を吐いた。
蘆塚が傷を確かめると、伝助は、胸のあたりを一突きされていた。
致命傷となる傷であった。
蘆塚は、戦場での長年の経験から、伝助の命がもう長くはないことを、瞬時に悟った。
『あ……、蘆塚様?
て……、天国は、ほ、本当にあるんですかの?
天国に……、い、行ったら、嫁と……、子供に、あ、会えるんですかの?
オ……、オラ、馬鹿だから……、よ、よくわからなくて……』
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