第九章 夢の終わりに

20/31
5498人が本棚に入れています
本棚に追加
/660ページ
『伝助ーーー!』 蘆塚は、伝助のもとへ行き、命乞いをした男を即座に斬り、倒れようとした伝助を、あわててだき抱えた。 『馬鹿者! おぬしの優しさが命取りになると、あれほど言うたであろう! どこをやられた! 胸か?』 『あ……、あ……、蘆塚様……。 オ、オラ、蘆塚様を……お守りすると言うたのに……。 あ……、足を引っ張っちまって……』 『無理にしゃべらずともよい!伝助』 グボッ 伝助が、口から鮮血を吐いた。 蘆塚が傷を確かめると、伝助は、胸のあたりを一突きされていた。 致命傷となる傷であった。 蘆塚は、戦場での長年の経験から、伝助の命がもう長くはないことを、瞬時に悟った。 『あ……、蘆塚様? て……、天国は、ほ、本当にあるんですかの? 天国に……、い、行ったら、嫁と……、子供に、あ、会えるんですかの? オ……、オラ、馬鹿だから……、よ、よくわからなくて……』
/660ページ

最初のコメントを投稿しよう!